はじめての婚活パーティー⑤
(④までのあらすじ)
どうも、makです。
「はじめての婚活パーティー」も、次の⑥で最終回です。
今回行ってわかったのは、婚活パーティーという場は「実際の戦場さながら、本当に精神を削られる場所だ」ということでした。
これまで出会いが少なかった人間にとってみれば、この2〜3時間の間に、人生で経験した出会いと別れがギュッと濃縮されたような感覚。
そしてその出来事に一喜一憂する心の乱高下。
もう終わったその日は家に着いてソファーに座った瞬間、ぱたっと寝てしまったのを覚えています。
そこまでに精神を消耗させたのは、すべてここからの出来事でした。
いったい後半戦に何が起こったのか。
そしてmakは?
すべては、ここから明らかに。
それでは「はじめての婚活パーティー」最終章、スタートです。
最後のフリートーク
「makさんお話しましょ!」
そういって振り返った先にいたのは、麗子お嬢様だった。
makは自分の顔が紅潮するのを悟られないよう、努めて簡単に「ぜひ」とだけ答えた。
思えば立て続けに起こるイベントで、誰かとゆっくり話ができたのは、これがはじめてだったと思う。
makはとにかく喋った。
自分の住んでいるところ、今の仕事、休日の過ごし方。
途中でイケガミが「俺とも話そうぜ」と割り込んで来たが、
『すまないが後にしてくれないか』
そう言って一蹴した瞬間が、一番気持ち良かった。
おそらくフリータイムのほとんどを、麗子お嬢様との話に費やしたと思う。
流れが変わったのは、同じ区内に住んでいることがわかり、『一緒に飲みに行こう』と意気投合した後だった。
麗子お嬢様が、ふと聞いてきた。
「ところでmakは、いつ◯◯県に帰るの?」
makは最初、意味がわからず、
『盆と正月くらいかなー』なんて言っていた。
「違う違う、仕事では◯◯県には帰らないの?」
誰かが向こうで扉を閉める音が聞こえた。
「私、近いうち◯◯県に帰るんだー。
だからできれば向こうで一緒に過ごせる人がいいの。」
運命の神様ってやつは、いつだって誰かに味方する。
その日はたまたま俺じゃなかっただけで、たぶん彼の味方だったんだろう。
「あ、ここにいたんですか。僕も混ぜてくださいよ」
笑顔で入ってきたのは、やはりジャニーだった。
それまで静かだと思っていた空間が、急に賑やかに感じられた。
二人の時間が終わった瞬間だ。
「ちょっと聞こえたんですが、麗子お嬢様って近いうち◯◯県に帰るんですか?」
ジャニーが一歩進んだ。
「偶然だなぁ。僕、◯◯銀行で仕事しているんですが、ちょうど4月に転勤で、◯◯県に帰るんですよ」
まだ麗子お嬢様の視界に、makはいただろうか。
「そのことで先月彼女と揉めてフラレてしまって。」
「転勤前に、◯◯県主催のパーティーなら…と思って来てみたんです。」
急に横から押された感じがしたのは、気のせいだったのかもしれない。
でもなぜだか距離を感じて、makは一歩踏みだそうとした…が、すでに遅かった。
「じゃあねmak、またお盆に飲めたらいいね」
それがmakの聞いた、最後の言葉だった。
フリータイム終了の鐘がなった。
ロスタイム
こういう時に限って、司会はいつもテンションが高い。
が、今日は様子が違ったようだ。
「さぁ、それでは最後に!皆さんから一分間アピールをしていただいた後、いよいよマッチング…の予定だったんですが」
「すみません、デザート配るの忘れてました」
…どこまで段取り悪いんだ。
早く終わってほしい時に限って終わらないのは世の常か。
デザートはケーキだったが、案の定、配るのに時間がかかってたので、
「やりますよ」と言ってみんなに回していった。
が、この日は何もかもダメだったんだろう。
配っている最中に、誤って誰かのグラスを倒してしまった。
ガシャン
(ほら、なんかいい人ぶってるから)
(いるよね、そういう人)
…神はいったいどこまで俺を追い詰めるのか。
いたたまれない視線の中、あわてて床を拭こうとしゃがんだその時。
???「段取り悪いと手伝いたくなりますよねー」
声と共に、伸びてくる白い手。
「私もイベントやるんでわかります。今日は見ててずっとイライラしてて」
「一緒に拭くんで、パパッと配っちゃいましょう」
まぶしく見えたのは、ライトのせいだったのだろうか。
…見上げるとそこにいたのは、女子Bだった。
(最終話⑥に続く:次回は3/16頃に更新予定です)